まちづくりセミナー

2023年11月8日
by | 宮田 駿介

【開催レポート】第13回まちづくりセミナー「長野県における“ウォーカブルなまち”を考える」を開催しました!

 10月24日(火)に「長野県における“ウォーカブルなまち”を考える」と題して、日本大学理工学部建築学科 泉山塁威 准教授をお招きし、県内市町村職員向けのオンラインセミナーを開催しました。UDC信州では、県内市町村から「ウォーカブルなまちづくりを進めていきたい」という自治体の相談が多い一方で、都心部で行われているようなウォーカブルの取り組みについて、県内の市町村でどうしたら実現していくことができるのか、という課題認識を持っていました。

 そんな中、セミナー前半は泉山先生の方から、ウォーカブルなまちづくりに向けた国の施策背景や海外の動向、考え方、なぜ人中心のまちづくりが大切なのかといった概念や、泉山先生が各地で関わっていた事例などをご紹介いただきました。

 その中で特に印象に残ったのは、行きたくなる場所、駐車場の配置、交通戦略など、ウォーカブルなまちづくりを進めるには、都市やまち全体で考えることが必要で、歩くだけでなく自転車などの交通手段も考えることが重要だということでした。考えてみると、歩きたくなる街というのは目的地があり、そこに至るまでの環境、交通結節点からの適切な距離感など、いろんな要素が関係していますよね。以下に泉山先生からご紹介いただいたスライドをいくつか掲載いたします。

 セミナー後半は、泉山先生とUDC信州の倉根コーディネーターとのディスカッションを実施。各市町村からの質問やセミナー前半の泉山先生での気になるところを聞いていきました。

 最近では官民連携のビジョンを作りたいという自治体等も増えている一方で、ビジョン策定後に官民連携でプロジェクトをどう動かしていくかを悩んでいる自治体も多い現状に触れ、泉山先生からは、『ビジョンを作る際に、何のためにやるのかを明確にすることが重要で、地域のコンディションがどうなっているか(地元ニーズやハード整備、再開発など)も把握することも大事。また、「10年後のビジョン」のように遠い目標だけだと実感がわかないため、特に若い世代に対しては大きな目標と小さな目標の両方あるとよい。そのため、なるべく早めに社会実験等をやると自分事化でき、イメージもしやすいので短期的な取り組みも重要。』といったお話もいただけました。

 一方、ビジョンに描かれてことすべてを実施していくことは正直難しいところ・・・。どういった観点で優先順位をつけてやっていくべきかという質問に対しては、『時間もかかるところよりも、市民が効果がわかるようなところからやった方がよい。その決め方はその街で大事なエリア、空間、精神的にも重要な場所があげられ、歩行者量や百貨店などの重要なところなどになる。ここは大事だよね、というところを共有するところから始めた方がよい』とのことでした。

 また、倉根コーディネーターから、長野県内における現状をお伝えしてさらに深堀!

 UDC信州の事務所がある長野市中央通りの事例を挙げ、駅から善光寺までの約2kmの中間地点くらいに数年前に公園(セントラルスクゥエア)ができたことで、歩く人が増えた感覚があると話題提供。データなどがなく実態がわからない状況でしたが、泉山先生からは、『「歩きたい」距離は400m程度で、「歩ける」距離は800mくらいではないか。観光客だと門前町を歩くことを目的に来ている場合があり2kmくらいは歩く可能性がある一方、市民だと日常的にそこまでは歩ける距離ではないので、休憩できる空間(カフェやベンチ等)により精神的な距離感を短くすることも重要』とのお話もいただきました。

  • とある日のセントラルスクゥエア。
  • 長野駅と善光寺との間に位置するセントラルスクゥエア(長野市)

 「ウォーカブルに向いているエリアはどこか」という質問に対しては、「城下町や街道などの歴史的な文脈が集まっているところは人口密度が高いため、そうしたところをやるべきと感じる。ただ、地方都市の場合、ある程度人口維持できていても、郊外にスプロールしまちなかに人口密度がないことがあり、昼夜間人口などのそういった人口規模以外も重要。」とのこと。さらに、県内市町村では、メインストリートだけでなく、そこから逸れた魅力的な繁華街やストリート、路地も多く、リノベーションが進むエリアもある実態に触れ、そのようなところを取り組むことに対しては、「メインストリートをウォーカブル化にしていくと、横道が影響されオープンカフェ化されるような話は聞いている。ただ、メインストリートがウォーカブルになると、横道に路駐されてしまう場合もあるので、できれば通過交通をなるべく排除した上で地区内の交通として影響のないところを止められるとよいと思う。」と、メインストリートとその周辺との関係性も考えることの重要性を学びました。

 上記以外でも、色んなご質問をさせていただき書ききれないところですが、様々な観点からディスカッションさせていただき、我々としても県内の市町村でもウォーカブルを進める意義を十分実感できました!

 最後までご覧いただきありがとうございました。また、泉山先生にはこの場を借りて感謝申し上げます。ぜひ長野県にもお越しいただければ幸いです!

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