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2020年9月1日
by | 竹中 唯

信州地域デザインセンター設立1周年シンポジウムレポート

信州地域デザインセンター(UDC信州)の設立から1周年を迎え、シンポジウムを令和2年9月1日に開催いたしました。

シンポジウムでは、UDC信州の活動報告を行うとともに、コロナ禍により変化する私たちの生活を踏まえて「危機を転機にかえるまちづくり」をテーマとして、講演とトークセッションをYouTubeライブ配信でお届けしました。
多くの方にご視聴いただきまして、誠にありがとうございました。
(一部、音声トラブルでお聞き苦しいところがありまして、ご迷惑をおかけしました。)

1年目のUDC信州の活動

昨年8月の設立から現在まで、ありがたいことに28市町村43件のご相談をいただきました。

長野県庁へ引き継いだ案件などもあるため、現在は22案件が進行しています。相談が多い内容は、公共施設・公有地の活用、中心市街地の再生です。市町村の悩み相談、プロジェクトを進めるため、コーディネーターたちは、足しげく各市町村に通って対応しています。

UDC信州の活動は「支える」「育む」「発信する」を3本柱としています。

「支える」としましては、4つの事例を説明させていただきましたので、アーカイブをご覧ください。

「育む」は、まちづくりセミナーを定期的にオフ・オンラインで実施していますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

「発信する」は、「2019年度活動報告書」と、下記コンテンツにて定期的に更新を行っていますので、ご確認ください。

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あるつくトークのYouTube

基調講演「コロナ禍によるライフスタイルの変化とこれからのまちづくり」

次に基調講演として、東京大学先端科学技術研究センター共創まちづくり分野 教授 小泉 秀樹氏に「コロナ禍によるライフスタイルの変化とこれからのまちづくり」についてお話をいただきました。小泉氏は、小布施町周辺の農村地域における社会実験の実施など、広くまちづくりに携わっています。

小泉氏によると、コロナ禍は生活に制約をもたらしており、改めて都市の本質について考え直す機会として捉えられているそうです。

最近の都市計画では、たくさんの人が集まって活動することに価値が置かれていましたが、今後は人の密集がない、開けた場所の価値が見直される傾向にあるとのことです。一方で、その状況下でも残る場所というのは、「珍しい出会いやサービスなどの、本物の体験ができる場」とのこと。

さらに、都市では満員電車などの過密への問題提起もあり、地方の良さに目を向ける方が、若い層を中心に増えているようです。今後、働く場所にとらわれないライフスタイルが普及していくことで、地方への移住者や関係人口が増えて、地方と都市の関係は大きく変わっていくかもしれません。

長野県から都市へのアプローチとしては、地域のコミュニティを大切にしながら、地方への移住者や関係人口が、観光客のような消費者ではなく、地域の担い手に回るようなビジョンをつくることも、好ましいと話されました。

今後の理想のまちは、リアル&バーチャルや、平時&危機(災害時)などの、どちらにも対応できる、両面性のある「Dualな都市」とのこと。

例えば過密はなく、中心部に行けば綺麗な町並みや賑わいもあるけれど、周辺には田園が残っている、かつ、住民もボランタリーな方や、クリエイターも集まる。長野県でいえば小布施町のような場所であると、例を挙げました。

このような地域は、平時でも魅力的ですが、危機時でもクリエイティブ、持続可能な地域となる可能性を秘めているそうです。

コロナ禍の生活変化は、過渡期で未知数な部分も多くありますが、今後、勢いを持てる地域は、上記のような場所なのかもしれません。

「公」「民」「学」の視点から、まちづくりについてトークセッション

最後に、トークセッションを行いました。コロナ禍による変化を、新しい成長の糧にする、かつ乗り越えていくために、どのようなライフスタイル構築や、まちづくりを行えばいいのか、公民学それぞれの立場から話し合いました。

パネラーは、3人の方に参加いただきました。
「公」の分野からは、塩尻市役所 企画政策部 次長古畑 久哉氏。「民」の分野からは、株式会社ふろしきや代表取締役 田村 英彦氏。「学」の分野からは、基調講演も担当していただきました東京大学 教授 小泉 秀樹氏。ファシリテーターは、UDC信州 副センター長 林 靖人です。

まずはひとりずつ、コロナ禍においてのポジショントークを行いました。

「公」において、古畑氏のいる塩尻市役所では、コロナ対策立案チームが発足されて、新しい生活様式を見据えた会議、対策が行われたそうです。オンライン会議会場の常設や、テレワークの推進、非接触ツールの使用なども、積極的に進めているとのこと。

市役所への来庁や、人から人へと渡る回覧板などの配布物、民生委員の訪問などの在り方も検討されており、今後、必要なところはDX(Digital Transformation)を浸透させるなどして、対応されていくそうです。

「民」からの田村氏は、千曲市のまちづくりプロジェクトに取り組まれているそうです。最近では、昨年の台風19号とコロナウイルスによる影響を受けた宿泊施設に支援ができる、クラウドファンディングを実施されました。

コロナ禍によって見えたことは、旅館業の方がお互いに宿泊しあうなどの、地域の支え合う深い関係と、行政に頼りきりとならない意識への変化とのこと。

今後、力を入れていきたいことはワーケーションの旅館利用で、旅館業の方々の働きがいにつながるリアルな人とのかかわりを、つくっていきたいと考えているそうです。

「学」の立場からは、現状を林より説明しました。講義室に学生が集まることができないため、例えば専門分野の地域ブランドの授業では、ブランド商品開発時の試食品などを、学生宅に送った後にオンラインでディスカッションをするなど、工夫を凝らした授業を行ったそうです。さらに、進行中である地域の課題解決に取り組むプログラムにおいても、オンラインとなったことから全国から参加者が集まり、新しい成長が見えているとのことです。

小泉氏の授業でも、同じようにオンラインを活用しているようです。東京から長野へフィールドワークに赴けない学生の代わりに、地元在住の大学生が支援に回っており、大学生の交流がオンライン上で深まっているとのこと。コロナ後にリアルな交流に変化するかもしれません。

しかし、小泉氏の授業のフィールドワークは、仲介コーディネーターである、UDC信州アドバイザー、東京大学の教員でもある新氏が、長野の現場にいたために成立したものだそう。コロナ禍において普及したオンラインは、万能のようにも見えますが、もともとの関係が無いと難しいものになってしまうだろう、とのことでした。

確かに、リアルで会ったことがない人との新しい関係は築きにくく、例えば仕事後の飲み会などの派生的な活動は、オンラインでは生まれにくいのが現状です。バーチャルはリアルにはかなわない部分が大いにあるという意見は、全員が持っていたようです。

今後、交流や影響をつくっていく際に重要な「人と会う」部分においては、都会に比べて人口密度が低く、人とのつながりが強い地方の方が、活動しやすいのではないかとまとめられました。

今までは余白が無いこと、埋めることに価値がありましたが、今後は地方の「何もない」と言われるような、余裕のある余白自体に、価値が見出されるかもしれません。

――UDC信州は、地方自治体のサポートがメインではありますが、当シンポジウムのように、未来や、新たな価値について思考することも役割のひとつです。今後のコロナ禍による生活について議論は尽きませんが、多くの視点を得られたシンポジウムとなりました。

今後も、輪を広げていろんな意見を伺うことで、新たな可能性を見出していくことを大事にしていきます。これからも皆様とまちづくりに取り組んでいきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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