岡谷市で「先端技術の活用により利便性の高い公共交通網を目指す」プロジェクト開始!
バス運行の赤字が拡大。利便性の向上と功効率的な運行の両立を目指す
2020年9月24日~30日まで、岡谷市とアルピコタクシー株式会社、日本電気株式会社(以下、NEC)、UDC信州による映像解析技術を利用したバスの乗降調査の実証実験が行われました。
地方部における路線バスは、全国的に見ても、自治体による赤字補填で運行されていることが多い状況です。岡谷市内を走る「シルキーバス」も、だんだんと市の負担が大きくなってきたことが課題でした。
プロジェクトが始まるきっかけは、岡谷市からバスの赤字運行について相談されたことです。
岡谷市では既に細かくバスの運行ダイヤを組んでおり、比較的乗車率が高いことが評価されていますが、それでも採算が取れるほどの乗車率ではないため、走らせるほどに赤字が増えていくのが現状です。どうしたら市民にとって利用しやすくできるのか、どうしたら限りある予算の中で効率的に運行できるのか、市とUDC信州で何度も話し合いました。
その中でUDC信州から、利便性向上のためにも、効率化を図るためにも、まずは現状のニーズをしっかりと把握することを提案しました。
困りごとを持つ地域と、技術を持つ民間企業をつなげる
ルートやダイヤを組み直すためには、乗降調査によって「どんな人が、何時から何時にどこへ移動するのか」を把握することが必要です。乗客が多いならバスの本数を増やし、反対に使われていないのならバス停を無くすことで到着時間を早めます。
岡谷市では、今までに市職員や委託された調査会社がバスに乗車し、乗降調査を行ってきた背景がありました。しかし、通常業務をしながらの実施には人手が足りず、調査期間が限られてしまうため、季節や天候によって変わるニーズを広く把握することは、難しかったのです。
そこでUDC信州では、精度の高い映像解析技術を有するNECに協力を依頼することにしました。 UDC信州は、独自のネットワークを持ち、地域の困りごとと、さまざまな技術をマッチングできることも強みのひとつです。町の課題を、企業に適切に伝え、岡谷市では、映像解析技術とAI技術を用いて、バスの乗降データを、年間を通して取得できないか検討を開始しました。
年間を通して乗降データを自動取得する。岡谷市とNEC、UDC信州の挑戦
今回の実証実験では、シルキーバスの車内に設置したカメラの映像から、人数や性別、年齢、マスク着用の有無といった属性を、AIで瞬時に推定、記録しました。プライバシーなどに配慮して、数値化したデータのみが保存されていきます。
NECの映像解析は、国際空港の入出国チェックやショッピングセンターのマーケティング調査など、多くの場で使われてきましたが、バス内での利用はNECにとって初の試みとなります。市内の電波状況や、バスの大きさ、乗降のルートなど、バスの特徴に考慮したシステムを、オリジナルに作る必要がありました。さらに昨今の現状をふまえて、マスクをつけた状態でも解析ができる技術を採用しています。
人手を使うことなく、システムだけで調査ができれば、年間を通してデータを取得できます。気候や時期によって変化する利用実態などを反映できるので、より便利な路線に生まれ変わることが期待できるでしょう。この先、高齢化の進行に伴う自動車免許の早期返納により乗車率が増えたり、利用頻度の高いバス停が出てきたりする可能性もありますが、そういった状況も常に把握できるので、迅速な対応が可能です。
市民の移動手段である路線バスのルートやダイヤの最適化を、持続的かつ効率的に行っていくための第一歩を踏み出しました。
――まだまだ乗り越えなければならない壁がたくさんありますが、その壁を乗り越えれば、同じような赤字路線を持つ、ほかの自治体での活用にもつながります。岡谷市をきっかけとして、全国のあらゆる地域のお悩みを解決できるかもしれません。
地域の課題を解決するために、ワクワクする未来を創るために、NECだけでなく、地域企業の方々にご協力いただかなければならない可能性も大いにあります。地域の人材が、地域で活躍できる機会につながるかもしれません。
UDC信州では、地域の課題を解決するため、ワクワクする未来を創るため、様々な企業や大学と連携しながら、今後もまちづくりに取り組んでいきます。